「ペルシャン・レッスン 戦場の教室」を観ました

11.11 Fri.公開 映画『ペルシャン・レッスン 戦場の教室』公式サイト

おもしろかった…!

ユダヤ人のジルはペルシャ人と嘘をついたことからナチス親衛隊大尉にペルシャ語を教えることになり、言語を創作していく…というそんなことある?!という設定。

実話を元にしたとどっかで聞いた気がするのだけれど、パンフを見ると小説を元にしたと書いてあるから実際にこういう人がいた、というよりは機転を効かせて危機を乗り越えた複数人の体験を参考に…という感じなのかな?

なんとか生き延びたけれど嘘がバレたら殺される…という終始ヒリヒリした空気の中物語が進みます。2人の間でしか通じない言語、というとロマンティックな響きもあるのにロマンスなど微塵もなく、絶対どっかでバレるじゃん…ハッピーエンドなわけがないじゃん…という不穏な空気を表すかのように、作中天気は殆ど曇っている。

大尉はジルのことをとても気にかけていて特別扱いするけれども、生殺与奪を握られているジルからしたら全然対等な関係じゃない。付き合いが長くなるにつれて親衛隊大尉として以外の面もみえてくるけれども、でもそばにいるのはずっと恐怖で不安で…。そりゃあそうだよなという感想しかない。大尉は守ってやると言うけれど、権力を持っているが故の無神経さ。もしジルが本当にペルシャ人だとしても状況の理不尽さにずっとヒリヒリすることにはなるだろう。

ラストは圧巻。大尉だってレストランを開きたいと言っているから、好き好んで戦をしているわけではないだろうに、巻き込まれれば人殺しになってしまう、そしてジルからしたらほとんど人殺しという存在でしかない、戦争の理不尽さ。

囚人たちは理不尽な扱いを受けくたびれている傍らで、親衛隊の面々は色恋にうつつを抜かしたりする様も描写されていて、本当にね…。なんだろうねこの格差は…。としょんもりしたり。人殺しにも人の営みがあって…なんていうか、なんていうか…。殺す方も殺される方もみんな人間なんだよなあ〜。

 

気になったポイントなど。観た人向けです。

  • ずっと曇りすぎでは?と思いググってみたところ、実際にドイツは曇りが多いそう。一年の半分くらいは冬という記述を見かけたくらい寒い時期が長く、冬の間は寒い上に曇りや小雨が多いと。夏は晴れることもあるみたいだけど、夏っぽい描写はなくずっと寒々しい絵面だったから実際こんな感じで鬱々としやすいんだろうな。
  • 曇り空に対して「いい天気」と言っていたのは、雨が降らなくてよかったという意味なのか、それとも皮肉なのかどっちなんだろ。素朴な疑問。
  • ジルは読み書きできないって言ったのに、書いてるじゃん???と疑問だったのだけれど、ドイツ語はできるからドイツ語で書いてたってことなのか…?日本人が外国語の発音を聞いてカタカナで表記するみたいな。
  • 大尉、単語覚えたら本読みたくなりそうなもんだけど、読まなかったのかなあ…というのも疑問。読み始めたら全然わかんなくね?となってすぐバレそうだなと。でも読み書きは教わってないからやっぱ読めないな〜で諦めなのかな。アルファベットだし多少わかりそうでは?と思っちゃうんだけど、自分も英語は多少読めてもスペイン語はさっぱりだしそんな感じなのかなあ…。
  • ジルを疑いつつも信じたいから敢えて読まなかった説も考えたけど、その割にはすごい真面目に勉強してるんだよなあ…。信じたい!って気持ちが人を盲目にさせるということは多々ありますから、むしろその盲目さにリアリティがあるのかも。とか。
  • ラストシーンから考えると、大尉はジルの言語を信じてるもんねえ…。そもそも言語を教わることを口実に、気の置けない相手を欲していた面もあって、だから頑なに信じようとしたのかなとか。親衛隊内部でしか人間関係を持てないと疲れちゃうこともあるだろうし。ナチスの思想に共感して入隊したわけじゃないもんな。
  • 大尉が真実を悟るであろうシーンは本当に鮮やかでしたね…。創作した言語を暗記するために名簿をも覚えざるを得なかったジルが囚人たちの名前を述べるシーンも本当に…。